けんぽニュース&お知らせ
2024年02月20日
お酒の飲み方を見直してみましょう。
春になると、送別会や歓迎会でお酒を飲む機会も増えてきます。
喫煙の健康への影響は広く知られるようになりましたが、アルコールと健康の関係はそれほど注目されていませんでした。そこで厚生労働省では、適切な飲酒量・飲酒や飲酒後の行動の判断を示す「飲酒ガイドライン」の作成を計画。昨年末には、その案が公表されました。
「酒は百薬の長(適量のお酒はどんな薬にも勝る)」とのことわざがありますが、アルコールの影響には個人差があり、その時々の体調でも変化します。
今回は「飲酒ガイドライン」の内容から一部をご紹介します。内容を参考に、飲酒について考えてみましょう。
飲酒による影響について
厚生労働省が発表したガイドラインは、基礎疾患などがない20歳以上の成人を中心に調査。飲酒による身体などへの影響について、年齢・性別・体質などによる違いやリスクなどを示しています。
年齢の違いによる影響
若い層への飲酒の影響は広く知られています。10代や20代の若年者は脳の発達の途中であり、多量の飲酒によって脳の機能が落ちるとのデータがあります。
高齢者は、加齢による体内水分量の減少などで、若い時期と同じ量のアルコールでも酔いやすくなります。また、飲酒量が一定量を超えると、認知症発症の可能性が高まります。
性別の違いによる影響
一般的に女性は、男性と比較して分解できるアルコール量が少ないとされています。エストロゲン(女性ホルモンの一種)などの作用で、アルコールの影響を受けやすいといわれます。このため女性は、男性に比べて少ない飲酒量、また短い期間の飲酒でも、アルコール性肝硬変になる場合があり、アルコールによる影響に注意が必要です。
体質の違いによる影響
アルコールを分解する分解酵素のはたらきの強弱は、個人によって異なります。分解酵素のはたらきが弱い場合は、飲酒で顔が赤くなる、動悸や吐き気がするなどの状態になることがあります。
分解酵素のはたらきが弱いタイプの人は、アルコールを原因とする口の中のがんや、食道がんなどのリスクが高くなるというデータがありますので要注意です。
飲酒量と健康への影響について
自分の飲酒量はどれぐらいなのか、それを確認するためガイドラインでは、純アルコール量に着目しています。純アルコール量を目安に、自分に合った飲酒量を決めることが大切です。
お酒に含まれる純アルコール量は、「グラム(g)=お酒の量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8(アルコールの比重)」で表します。飲酒をする場合には、お酒に含まれる純アルコール量(g)を認識し、ご自身のアルコール摂取量を把握し、健康管理に活用しましょう。
ちなみに「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」としては、「1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」が示されています。
純アルコール量の計算式
飲酒量と健康への影響として、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、少しの量でも飲酒自体が発症リスクを上げてしまうというデータがあります。
飲酒は疾患や臓器によっても影響が異なり、個人差があります。これらのリスクを目安としてください。不安な場合は、かかりつけ医などに相談してみましょう。
疾病別リスクと飲酒量(純アルコール量)
疾病名 | 飲酒量(純アルコール量) <目安となるアルコール飲料量>※[]内はアルコール度数 |
||
---|---|---|---|
男性 | 女性 | ||
1 | 脳卒中(出血性) | 150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
0g<大 |
2 | 脳卒中(脳梗塞) | 300g/週 <ウイスキーダブル60ml[43%]15杯分> |
75g/週 <ビール500ml[5%]約4本分> |
3 | 虚血性心疾患・心筋梗塞 | * | * |
4 | 高血圧 | 0g<大 | 0g<大 |
5 | 胃がん | 0g<大 | 150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
6 | 肺がん(喫煙者) | 300g/週 <ウイスキーダブル60ml[43%]15杯分> |
データなし |
7 | 肺がん(非喫煙者) | 関連なし | データなし |
8 | 大腸がん | 150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
9 | 食道がん | 0g<大 | データなし |
10 | 肝がん | 450g/週 <ウイスキーダブル60ml[43%]約23杯分> |
150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
11 | 前立腺がん(進行がん) | 150g/週 <ビール500ml[5%]7.5本分> |
データなし |
12 | 乳がん | データなし | 100g/週 <ビール500ml[5%]5本分> |
健康に配慮した飲酒とは
では、飲酒をする場合は、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
(1)自らの飲酒状況を把握
飲酒によるリスクを減らすには、自分の飲酒状況を把握することが大切です。
気になることがあれば、AUDIT(問題のある飲酒をしている人を把握するために世界保健機関(WHO)が作成したスクリーニングテスト)を参考に、自らの飲酒習慣を確認しましょう。
(2)あらかじめ量を決めて飲酒をする
飲む量を決めておけば過度な飲酒を避けることができ、飲酒行動の改善につながると言われています。
(3)飲酒前または飲酒中に食事をとる
食事は血中のアルコール濃度を上がりにくくし、酔いにくくする効果があります。
(4)飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする
水分の補給で、飲む量に占める純アルコールの量を減らす効果があります。
(5)1週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるなど、継続しての飲酒を避ける)
毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。1週間の純アルコール摂取量を減らすために、定期的に飲酒をしないようにしましょう。
飲酒と睡眠
寝つきをよくするために、アルコールを使う人は少なくありません。
アルコールを摂取すると、睡眠の前半では寝つきの時間の短縮、深い睡眠の増加といった変化をもたらします。しかし、その効果は持続せず、睡眠の後半では深い睡眠の減少などがみられるほか、アルコールの量、性別、年齢を問わず中途覚醒(夜中に目覚めて、再び寝付くのに時間がかかること)を増加させるといったことが報告されています。
「眠るためのお酒」は寝付きをよくしてくれるように感じられますが、結果的に睡眠に対して悪影響を及ぼします。睡眠で困った際には、アルコールではなく、医療機関を受診して相談することをご検討ください。